ハノイに着任以来2ヶ月半が瞬く間に過ぎました。この間に菅総理大臣の公式訪問をはじめ日本から要人の訪越が相次ぎ、またベトナムからはチエット国家主席がAPEC首脳会議出席のため横浜に行かれ,その後名古屋を訪問されました。双方向の交流が活発化していることは大変喜ばしいことです。先週の12月第1週も両国にとって大切な動きがありました。
第一に、対ベトナム支援国会議が開かれました。今年はマクロ経済の安定化が主要議題です。私からは、厳しい国際経済環境の中で7%近い経済成長を達成しつつあることを評価する一方、10%になりつつあるインフレと止まらないドン安に懸念を述べ、効果的な対策を講じてほしいと要望しました。(なお,この点についてはここで投資し活動している日本企業にとっても非常に重要な点ですので、他日会談した財政大臣にも要望しました。)その上で、ベトナム経済が更に発展する上で不可欠な経済インフラ整備の為に昨年を上回る約18億ドルの支援を表明しました。昨年は緊急財政支援という特殊要因がありましたので,それを捨象しプロジェクト支援で比較すると50%の増額となります。ODAは日本の厳しい財政状況の中で減少傾向にあります。その中での増額ですから納税者の支援を得るためにも呉々も効果的に使ってほしいと主張してきています。この会議の締めくくりとして行われたズン首相主催の夕食会では、フック計画投資大臣の配慮で首相の隣に席を譲ってもらい、首相と懸案となっているODA案件について話しました。ズン首相から日本の支援を高く評価し感謝していると強調されていました。私自身これまでにハノイ、ホーチミン、ダナンで日本のODAプロジェクトを見てきましたが、いずれもなくてはならない重要なインフラであったり、施設であったりしました。またどのプロジェクトでも関係者から高い評価がつたえられましたし、日本に対する謝意の表明が石碑のような形で表されています。
第二は、投資環境の整備を話し合ってきた日越共同イニシアティブです。これまで第三フェーズを実施してきましたが、今回実施状況を点検し、評価を加えました。全部で62項目のアクションプランがあるなかで50項目について積極的評価がなされました。残された項目の中には電力事情の改善や裾野産業の育成等が多くあります。それらの難易度を勘案すると第3フェーズはよい成果を出したと評価できるでしょう。共同議長を務められた加藤住友商事社長、高橋昭和電工社長と私からその旨フン副首相、サン共産党政治局書記局常務にも報告しました。そしてまだまだ投資環境を整備していただきたい点があるので第4フェーズを行うことで合意し、できるだけ早期に,遅くとも来年半ばまでに開始することとなりました。この日越のフォーラムは大変ユニークで重要です。このように両国官民が一体となって投資環境を改善するため話し合う場は他の国ではありません。一項目づつ解決してことにより進出企業にとってはプラスになりますし、これから進出しようとしている投資家にとっては安心感を与えます。ベトナム政府関係機関も大変真剣に問題に取り組み,解決しようと努力されてきていると思います。この次の段階は、先に述べました通り難問が多くあります。また、ASEAN自由貿易が本格的に始まる直前の重要な時期です。2020年の工業国化を目指すベトナムの節目になる時期です。この貴重なフォーラム上手に活用し、日本の企業がここで活躍できるよう投資環境を改善してゆこうと思います。
援助と投資環境整備の会合が続けて開催されました。両者はベトナムの経済発展にとって不可欠な要素です。ベトナム政府が、日本政府と経済界にいかに高い評価をしているか、また、今後の協力をいかに強く期待しているかを実感する1週間でした。
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